NISAで損失が出たら確定申告できる?損益通算・繰越控除ができない理由とは
NISAで損失が出たら確定申告できる?損益通算・繰越控除ができない理由とは

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NISAで保有していた株や投資信託を売却し、損失が出ることがあります。

課税口座で上場株式等の売却損が出た場合は、一定の要件を満たせば、ほかの譲渡益と相殺したり、損失を翌年以降へ繰り越したりできます。

 

そのため「NISAの損失も確定申告すれば税金が戻るのでは?」「特定口座で出た利益と相殺できないの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

 

結論からいうと、NISA口座で発生した損失は、確定申告をしても損益通算や繰越控除には利用できません。

NISAは利益が非課税になる一方で、損失も税金の計算から切り離される制度だからです。

この記事では、NISAで損失が出た場合に確定申告が必要なのか、課税口座の利益と相殺できるのか、売却後の非課税枠がどうなるのかを解説します。

 

※本記事は2026年7月16日時点の制度に基づいて作成しています。個別の申告については、税務署や税理士などの専門家へご確認ください。

NISAの損失と確定申告についての結論

 

NISA口座で損失が出たときのポイントは、次のとおりです。

 

  • NISA口座の損失だけを理由に確定申告する必要はない
  • 課税口座の上場株式等の譲渡益とは損益通算できない
  • 課税口座で受け取った一定の配当所得とも損益通算できない
  • 損失を翌年以降3年間繰り越すことはできない
  • 2024年以降のNISAでは、売却商品の取得価額分を翌年以降に再利用できる

 

確認項目 NISA口座の損失 課税口座の上場株式等の損失
ほかの譲渡益との損益通算 できない 一定の要件でできる
一定の配当所得との損益通算 できない 申告分離課税を選ぶなど、一定の要件でできる
損失の繰越控除 できない 一定の要件で翌年以降3年間可能
損失を控除するための確定申告 できない 損益通算や繰越控除を利用する場合は必要

NISAの損失は確定申告しても控除できない

NISA口座で株や投資信託を売却して損失が出ても、その損失を確定申告で控除することはできません。

NISA口座で取得した上場株式等を売却して生じた損失は、税務上「ないもの」とみなされるためです。

そのため、NISAの損失を使って、次のような処理をすることはできません。

 

  • 課税口座の上場株式等の譲渡益と相殺する
  • 課税口座で受け取った上場株式等の配当所得と相殺する
  • 控除しきれない損失を翌年以降へ繰り越す

 

NISAの損失を確定申告書へ控除対象の損失として記載し、所得や税額を減らすことはできません。

なお、課税口座で発生した上場株式等の譲渡損失についても、原則として給与所得や事業所得、不動産所得などとは損益通算できません。

課税口座で損益通算の対象になるのは、主にほかの上場株式等の譲渡益や、申告分離課税を選んだ一定の配当所得などです。

 

参考:国税庁「NISA制度」

そもそも損益通算とは?

損益通算とは、投資で発生した利益と損失を相殺し、課税対象となる金額を減らす仕組みです。

たとえば、課税口座で次の取引があったとします。

 

  • A社株の売却益:50万円
  • B社株の売却損:30万円

 

この利益と損失を通算できれば、課税対象となる利益は50万円ではなく、差額の20万円です。

課税口座で発生した上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば、ほかの上場株式等の譲渡益と相殺できます。

 

また、確定申告で申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等と、譲渡損失を通算できる場合もあります。

しかし、30万円の損失がNISA口座で発生した場合は、同じように扱われません。

 

NISAの損失は税務上ないものとみなされるため、課税口座で得た譲渡益や配当所得から差し引けないのです。

NISAの損失と特定口座の利益は相殺できない

具体例で確認してみましょう。

同じ年に、次の取引があったとします。

 

  • NISA口座の売却損:30万円
  • 特定口座の売却益:50万円

 

実際のお金の増減だけを見ると、差し引き20万円の利益です。

しかし、税金を計算するときは、NISA口座で発生した30万円の損失はなかったものとして扱われます。

 

そのため、課税対象となるのは特定口座の利益50万円です。

上場株式等の税率を20.315%として単純計算すると、50万円の利益に対する税額は10万1,575円となります。

 

項目 金額 税務上の扱い
NISA口座の売却損 マイナス30万円 ないものとみなされる
特定口座の売却益 50万円 50万円が課税対象
税額の目安 10万1,575円 50万円×20.315%

 

NISAの損失と相殺して、差額の20万円だけを課税対象にすることはできません。

なお、この例は手数料などを考慮しない単純計算です。

NISAの損失は3年間の繰越控除も使えない

課税口座で発生した上場株式等の譲渡損失は、その年の利益から差し引いても損失が残る場合、一定の要件を満たせば翌年以降3年間にわたって繰り越せます。

これを「繰越控除」といいます。

 

たとえば、課税口座で2026年に50万円の譲渡損失が発生し、2027年に40万円の譲渡益が出たとします。

損失が発生した年から必要な確定申告を続けていれば、前年の損失と翌年の利益を相殺できる可能性があります。

 

繰越控除を利用するためには、損失が発生した年分の確定申告を行い、その後も連続して確定申告書を提出する必要があります。

上場株式等の取引がなかった年も、損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

 

一方、NISA口座で発生した損失には、この3年間の繰越控除を利用できません。

NISAで2026年に50万円の損失を出し、2027年に特定口座で40万円の利益が出ても、前年のNISAの損失とは相殺できないのです。

 

参考:国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

NISAの損失だけなら確定申告は必要?

NISA口座内の損失だけを理由に、確定申告をする必要はありません。

確定申告をしても、NISAの損失を課税口座の利益から控除したり、翌年以降へ繰り越したりできないためです。

ただし、NISAとは別に、次のような事情がある場合は、確定申告が必要になったり、申告によって税負担を抑えられたりする可能性があります。

 

  • 課税口座で上場株式等の売却損が出た
  • 複数の証券会社の課税口座で利益と損失が出た
  • 課税口座の損失を翌年以降へ繰り越したい
  • 課税口座の譲渡損失と一定の配当所得を通算したい
  • 株式取引とは別に申告が必要な所得がある

 

これらはNISAの損失を申告する手続きではなく、課税口座の取引や、ほかの所得について確定申告するケースです。

課税口座なら損失を確定申告できることがある

NISAと特定口座・一般口座の大きな違いは、利益だけでなく、損失の税務上の扱いにもあります。

課税口座では、一定の要件を満たす上場株式等の譲渡損失について、次の制度を利用できる場合があります。

 

  • ほかの上場株式等の譲渡益との損益通算
  • 申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等との損益通算
  • 控除しきれなかった損失の3年間の繰越控除

 

ただし、特定口座を利用していれば、必ず確定申告が必要になるわけではありません。

同じ証券会社の特定口座・源泉徴収ありで発生した譲渡益と譲渡損失は、原則として証券会社が口座内で計算します。

 

その特定口座へ受け入れた一定の配当等についても、口座内の譲渡損失と通算される場合があります。

一方、複数の証券会社をまたいで損益通算したい場合や、控除しきれなかった損失を翌年以降へ繰り越したい場合などは、確定申告を検討します。

 

課税口座の譲渡損失であっても、給与所得や事業所得などと自由に相殺できるわけではありません。

確定申告をする際は、どの利益と損失を通算できるのかを確認しましょう。

 

参考:国税庁「特定口座制度」

含み損の状態では確定申告できない

NISAで保有する商品が値下がりしていても、まだ売却していない場合は「含み損」の状態です。

たとえば、50万円で購入した投資信託の評価額が40万円になっていても、売却するまでは10万円の損失が確定したわけではありません。

含み損の段階では、NISA口座か課税口座かにかかわらず、その値下がりを譲渡損失として確定申告へ反映させることはできません。

 

また、NISAの商品を売却して損失を確定させても、その損失は税務上ないものとみなされるため、損益通算や繰越控除には利用できません。

損失が出たNISA商品は売却しない方がよい?

「NISAの損失は税金から差し引けないなら、値下がりした商品は売らない方がよいのでは」と考える人もいるでしょう。

しかし、損益通算ができないことだけを理由に、保有を続ける必要はありません。

売却するかどうかは、次のような点を踏まえて判断することが大切です。

 

  • 購入した理由や投資の前提が変わっていないか
  • 長期保有を前提に選んだ商品か
  • 資産配分が特定の商品に偏っていないか
  • 許容できる損失額を超えていないか
  • 近いうちに使う予定のお金を投資していないか

 

NISAだから必ず長期間保有しなければならないわけではなく、必要に応じて売却できます。

一方、相場が下落したことだけを理由に慌てて売却すると、その後の価格回復を逃す可能性もあります。

税金の扱いだけでなく、投資目的や保有期間、許容できるリスクを踏まえて判断しましょう。

損失を出して売却するとNISAの枠はどうなる?

2024年以降のNISAでは、保有商品を売却すると、売却した商品の取得価額分だけ非課税保有限度額が翌年以降に復活します。

基準になるのは、売却額や損失額ではなく「取得価額」です。

 

たとえば、成長投資枠で100万円分の株を購入し、値下がり後に70万円で売却したとします。

この場合、翌年以降に再利用できる非課税保有限度額は、売却額の70万円ではなく、取得価額の100万円分です。

 

項目 金額
購入時の取得価額 100万円
売却額 70万円
売却損 30万円
翌年以降に再利用できる非課税保有限度額 100万円分

 

ただし、売却した年の年間投資枠が、その場で復活するわけではありません。

復活した非課税保有限度額を利用できるのは翌年以降です。

 

また、復活した金額が、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の年間投資枠へ上乗せされるわけでもありません。

実際の買付けは、その年の年間投資枠の範囲内で行います。

 

なお、2023年までの一般NISAやつみたてNISAで保有している商品を売却しても、2024年以降のNISAの非課税保有限度額は復活しません。

参考:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」

NISAの損失でよくある疑問

NISAの損失を給与所得から差し引ける?

差し引けません。

NISA口座の損失は税務上ないものとみなされるため、給与所得や事業所得、不動産所得などから控除できません。

なお、課税口座で発生した上場株式等の譲渡損失についても、原則として給与所得や事業所得との損益通算はできません。

NISAの損失を配当金と相殺できる?

NISA口座の損失を、課税口座で受け取った配当金と相殺することはできません。

課税口座で発生した上場株式等の譲渡損失であれば、申告分離課税を選んだ一定の配当所得と損益通算できる場合がありますが、NISAの損失は対象外です。

NISA口座で保有する国内株の配当金が課税されていた場合は、損失とは別に、配当金の受取方法も確認しましょう。

NISAなのに配当金に課税される理由と、株式数比例配分方式の確認方法はこちら

旧NISAで発生した損失も確定申告できない?

2023年までの一般NISAやつみたてNISAで発生した損失についても、損益通算や繰越控除はできません。

2024年以降のNISAだけに設けられたルールではなく、旧制度でも同じ扱いです。

NISAの損失を確定申告書に記載できる?

NISAで発生した損失を、控除対象の譲渡損失として確定申告書へ記載することはできません。

課税口座でも取引している場合は、NISAの取引と課税口座の取引を分けて確認しましょう。

NISAで損切りしたら非課税枠をすぐ使い直せる?

売却した年に、年間投資枠をすぐ使い直せるわけではありません。

2024年以降のNISAでは、売却した商品の取得価額分に相当する非課税保有限度額が、翌年以降に復活します。

まとめ:NISAの損失は確定申告しても損益通算できない

NISAは、株や投資信託から得た利益が非課税になる制度です。

一方、NISA口座で損失が発生した場合も、税金の計算から切り離されます。

つまり、NISAは次のような仕組みです。

 

  • NISA口座で得た利益には原則として課税されない
  • NISA口座で発生した損失は税金から控除できない

 

NISAで損失が出ても、その損失だけを理由に確定申告する必要はありません。

確定申告をしても、課税口座の上場株式等の譲渡益との損益通算や、損失の3年間の繰越控除はできません。

 

ただし、課税口座でも売却損が出ている場合や、複数の証券会社で取引している場合は、課税口座の損益について確定申告を検討できる可能性があります。

確定申告を検討するときは、損失がNISA口座と課税口座のどちらで発生したのかを、証券会社の取引履歴や特定口座年間取引報告書などで確認しましょう。

 

NISAを利用する証券会社を見直したい方は、取扱商品や手数料、少額投資、サポートなども比較してみてください。

 

新NISAに対応する証券会社の特徴を比較した記事はこちら

参考情報

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